転職・起業事例12/定年を目前に知らない地で頑張る

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郡司政人は五八歳。目下、出向先の電器メーカーCエレクトロニクス社に単身赴任し頑張っている。

郡司は、東京の大学を卒業、三五年前に京浜地区にあるメーカーに入社した。専門は工業化学で、入社と同時に合成樹脂の研究所に配属され、それ以来ずっと合成樹脂の加工研究とユーザーに対する技術サービスに携わってきた。

この間、海外出張を数回経験するとともに、海外文献の調査や特許情報の検索などを通じて、英文、英会話にも接する機会が多かった。

五五歳の管理職定年を目前に控え、郡司もこれまでの専門から言えば合成樹脂の加工メーカーに進むのが自然だなあと思うようになっていた。

そんなある日、研究所で付き合いのあるコンサルタントの荒川匡がこんな話を持ってきてくれた。

「電器メーカーのCエレクトロニクス社で樹脂のわかる人を探している。R&Dセンターの技術顧問、勤務地は東北の小さな町」というものだった。一口で樹脂といっても範囲が極めて広く、郡司は、自分が携わってきたのはその中の合成樹脂、その中でさらにポリエチレンとポリプロピレンという汎用樹脂であり、電器メーカーで部品に使うエンジニアリングプラスチック(機械、装置などの部品やハウジング類のような工業的分野で、強度、耐熱性等の特長を生かして金属の代わりに使用されるプラスチックの総称)は扱ったことがないことに不安を感じた。

さらに、勤務地が東北地方ということになれば、共稼ぎをしている妻を京浜地区に残して単身で赴任しなければならない。単身赴任の経験はなかったので、これも不安のひとつだった。

郡司は荒川からこの出向話を聞いた目の週末、夫人と二人、車でその会社の立地する土地を訪れてみた。遠くに鳥海山を望み、山野の木々は赤や黄色に変わり、真っ赤なりんごが枝もたわわになっている風景。

頬をなでる風や畑の真ん中を流れる清流も、京浜地区に長く勤務している郡司にとっては、とても新鮮に感じられた。

彼は子供時代に一時期、東北地方に疎開していたことがある。山歩きが好きで、ときどきこのような風景に触れることもあり、「こんな所もいいな」、そんな気持ちが心の中にあった。彼は面接に行くことを決めた。人事担当者と一緒にその会社を訪問し、什事の内容を聞き、共に仕事をする仲間たちを紹介され、入社を決意した。

入社してからの郡司は、技術顧問の肩書きをもらった。電器部品に使う樹脂については、郡司が今まで扱ってきた合成樹脂だけでなく、あらゆる樹脂について何でも知っているものと思われて質問される。

だから今までよりも樹脂全般についての知見は増えた。

自分に期待されていることはきちんと果たしたいと思い、学習に励んでいる。苦しいときには自分が所属していた出向元の同僚が、資料や情報提供の面でバックアップしてくれるので心づよい。

慣れない単身赴任もようやくペースをつかむことができたようだ。

出向先の会社に積極的に飛び込んでいって、自分の居場所をつかみ取った郡司。これからが正念場だ。

現役転職コンサルタント


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